The Designers #01|HIROKO KOSHINO  「普通の洋服は作りたくなかった」— コシノヒロコが語る、創作、連帯、そして継承。

The Designers #01|HIROKO KOSHINO  「普通の洋服は作りたくなかった」— コシノヒロコが語る、創作、連帯、そして継承。

 

CFD会員デザイナーの"仕事・言葉・制作背景"を、本人の声として記録する「The Designers」

記念すべき第1回目は、CFDの創立初期からのメンバーであり、理事でもある"HIROKO KOSHINO"のコシノヒロコさんにお話を伺いました。

東京都現代美術館で開催中の『(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO―新説/真説 コシノヒロコ―』を舞台に、絵画とファッション、創作を続ける力、若い世代に伝えたいこと、CFD創立期の志、そして次の世代へ渡したいものについて伺いました。


 

今回、『(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO』、ということで、まだ「知られていない」という部分にもフォーカスが当たっていますが、この展覧会を通じてヒロコさん自身、新たに気づいたことなどはありますか?


まず皆さん、「コシノヒロコさんはここまで絵を描けるのか」ってびっくりされるんですよね。絵を描くというのは、自分の思いを可視化するということですから、それが立体になって洋服になっていくという、このプロセスが全部できる強みみたいなものを感じました。

そして、単なる洋服を作ってるというよりも「アートを感じる」とか「優しさの中にすごい意志の強いところが見える」とか、そんなふうにおっしゃてくださることなども含めて、展覧会をすることで、やっぱり客観的に自分を見られるのはいいチャンスだと思いました。


実際ヒロコさんの絵を拝見すると、一緒に展示されている服のパワーと同様にパワーを感じる一方で、服のハッピーな雰囲気とは違ってシリアスな迫力も感じました。

 

洋服っていうのは、たくさんの人たちにハッピーな思いで着てもらわないとダメ。戦争のイメージで作った洋服はお客様に届けられない。でも絵っていうのは戦争に対する抵抗であるというか、そういう憂いだとか、そういった思考がやっぱり出るんですよね。

だから私は、洋服はハッピーなものを作りたいけれど、その裏にやっぱり一つの葛藤があって。苦労があって初めて「ほんまもん」が作れると思う。

試練やそれを乗り越える力、エネルギーって必要よね。それが力強さになる。私が作っているものはファッションですから、そういう努力は見せないでむしろ見ている人がハッピーになってもらえたら、それは最高ですよね。

 

この展覧会の目的の一つに、若い世代に繋げていくというところがあると思いますが、
今の若手デザイナーに思うことはなんでしょうか。

 

ものづくりに対する考えが非常にイージーになってるように感じる。AIというものが答えを出すというか、そういうものに頼りすぎているというか。

根本的に、私たちみたいな、子供の頃から何もない中で一生懸命自分の作りたいものを材料から自分で考えながら作ってきたのと違って、なんでもモノや情報が溢れている。その情報から何を選択するかがその人の感覚だと思うけど、その感覚をしっかりと持てるようになる前に、何も(基盤が)ないままブランドを作る、ということを平気で言うような人がいる。そんなことでブランドなんか作っても、「今日やって明日潰れるわ」と思っちゃうんだけど(笑)。それくらい、継続していくってことはすごく大変で。

継続していく力はどうやって蓄えられるのかっていうと、大変な思いをたくさんすることだと思う。(今の人は)そういう体験がないというか。割となんの苦労もなくて、とんとん拍子でやって、ちょっとコンクールで1位か2位をとっただけで、もう自分のブランドを作れると思ってる子がいる。それだけではダメです。

もっと深くモノを見て、ある程度自分に厳しくやっていかないと、先詰まりになってしまうと思う。それを私は憂いて、「もっといろんなことを勉強しなさい」、「もっといいものを見なさい」、「どんなことがあっても自分の軸は曲げてはダメです」、ということを言っているんです(笑)。

 

この(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO展も、いいものを見て、触る場として、絶好の勉強の場ですよね。

 

でもね、いいものだけじゃなくて、洋服になっていないようなものもたくさん(過程には)あって。何かその時代に挑戦したりとか、実験したりとか、努力をして、今までにないものを作ろう、そういう気持ちが一つ一つに備わってくるのだと思います。わたくしのコレクションの洋服を皆さん見ていただいて、「何か強いものを感じる」と言っていただけるのはそこだと思うんですよね。

普通の洋服は作りたくなかった。でも服は、誰でも着られるものであるべきという信念もあるんだけど、その裏にそれじゃない、今までと違ったものをやりたいという、そういう意味で非常に実験的なことをやってきたわけです。

それと、普通のものに対する批判というか、抵抗というか、「今このままだと面白くないから、もっと面白いものを作ってやろう」とかね。そういったものを持って、ずっとそういうふうに考えて生きてきたんですよね。

 

新しいものに挑戦していくという流れの中で、展示の中でも、「TD6」や「CFD」、「具体美術協会」といった団体との関わりについて言及されているところがありましたが、CFDは初期、どのようにして立ち上がったものだったのでしょうか?

 

とにかくデザイナー同士の情報交換とかももちろんそうなんだけど、異業種の人たちともっと交流できるように...(と思って)。その時に困ってたのが、縫製工場がない、どこに売っていいのかわからない、大量生産だったらどうやって売るのかとか、という感じで、デザインができたとしても、それだけでは足りないことがたくさんあるから、それをどういうふうに補っていくかという中で、団体で助け合ってやっていくということ(が動機でした)。

それと同時に、パリみたいに国から助成をもらったりするため、(業界を大きく動かしていくには)ある程度一つの団体でないと国がそれを認めてくれないし、個人でやっているとやっぱりなかなか思うようにいかないことも多かったので、それこそ国を動かすぐらい、世界中のバイヤーが日本に来てくれるくらいの勢いでやりたいと思って当時、動いていました。

でもコロナ以降、なかなかうまくいかなくなってアパレル業界的にも難しい時代になってきたんですけど、こういう時こそ若い人たちが集まって、もっと一つの産業として、バイヤーは縫製工場なども巻き込んで、異業種とも集まって、世界に打って出るような団体になれるといいですね。これは個人ではなかなかできないことなので。

国としても業界としても、もっとファッションを単なる産業としてだけでなく、文化的見地から見たものとして捉えて、他の国にはないものを日本が作ってるんだというところを押し出していくこともやっていくべきですよね。それと同時に、それを支えていくためのバイヤーさんやショップオーナー、縫製工場などの人たちでもっと協力し合ってファッションを支えていけると、きっと面白い取り組みになるはず。

 

最後に、今後まだまだやりたいことがある、とおっしゃっていますが、具体的にチャレンジしたいと思われていることをぜひ教えてください。

 

"こどもファッションプロジェクト"は、子供達に非常に感動的な体験をたくさんしてもらうこと、日本の本当にいいものをしっかりと形で見せていくことをやっています。

海外から来る情報だけに目を向けて日本という背景を忘れては、私はダメだと思うのね。特に世界的な仕事をしていくためには、やっぱり他の国の人たちにはできないことをやっていかないと。他の国にはない素晴らしい環境が日本にはあるし、日本独特の文化がある。

とにかく本当の日本の良さというものをどういうふうに次の子供達に繋いでいくかというのも我々の仕事の一つだなと思って、そういう面での仕事をたくさんやってみたいと思っています。子供達は社会の宝ですから。


(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO ―新説/真説 コシノヒロコ―

会期:2026年5月26日(火)~7月26日(日)

会場:東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)

https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/NextCreationProgram/

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